ドーン報告書

 我々は境界空間を利用して移動したが、アンセルカンディムント市の惨状は劣悪であった。
市内は身体の一部が様々な楽器、植物、建物に変形させられた人間の遺体が路上に放置されていた。

人に対する取り扱いはまるで小さな虫を扱う児戯のようであった。
なぜこんなことをするのか。
まるで人間で遊んでいるではないか。

もしかしたら私達は本当に子供に遊ばれているのかもしれない。
それもこれも一人ぼっちにさせ、寂しい想いをさせていた私達のせいだと言う
受け入れ難い現実を認識するしかない。

<– 惑星意識戦争 戦時記録ファイル ドーン報告書より ->

軌道戦略衛星グングニル

ラングリッサ防衛計画の最終段階において致命的な問題が発生。
北方戦線の急激な崩壊により司令部の包囲状態が進行中。
他戦線は問題無い為、直接指揮下を除く全部隊権限を第四十四司令部へ移譲。
現時点において兵力2万5142の脱出経路はあらゆる方策を検討、試行したが結論として不可。
防衛目的完遂の為、軌道戦略衛星による爆撃目標地点を現作戦司令部に指定することを命ず。

<– 惑星意識戦争 戦時記録ファイル 本部受信記録より –>

法整備に関する私信

高度に不安定化した社会情勢下において、人的介入は喫緊の課題とされた。
人の行動から発せられた問題は、人の行動によって解決されるとの原理原則論である。

我々は治安上もしくは社会情勢上必要と認められる地域及び範囲について広範に議論してきたし、
道徳的かつ倫理的な問題は、常に我々の情報体制および指揮統制の範囲外で問題が拡大して初めて発覚した。

社会認識は撹拌され、知覚意識は拡大を続けていた。
我々の最大の目的は安定であり、秩序の維持である。

この作戦の過程で発見された幾つかの不安定化については見過ごされてきたが、それは知覚認識範囲外で起きた事象であり
当時の我々の能力では推論を立てることすら出来なかった。

本邦議会に提出された本法案は、それらの事態を改善すべく必要な処置および基本概念を整理し、また社会に広く公布するものである。

<- 旧世界記録ファイル 法整備に関して 公布6月19日、施行8月10日 ->

メセニ統合機構 VL00X03 火と炎について

おはようございます。メセニ統合機構情報照会端末のカレンです。

本日は初頭人類教育である世界構造について情報供出を行います。

人類社会は火と炎から発せられました。
火を持った人類は、それを炎とすることで神を超越する力を持ちました。

我々人類は火を持つことで不変性から逃れ、有限の世界に旅立ちました。

我々は火を通じて初めて神から独り立ちしたのです。

神から独り立ちした人類は、孤独と恐怖に苛まれました。

これにより人類は協力と社会を発見し、火を炎にする方法を発見しました。

私達は魂を神へ返す時に炎を通じて物質を浄化し、魂を還元させることにしたのです。

私達は神との決別に火を用いた代わりに、火を用いて自身を燃やすことで忠誠を示したのです。

私達は神との決別に罪悪感を覚えていました。

そして私達は感謝の意を神へ捧げる舞台を組み上げ、知恵を宝庫に収めました。

私達が現世に残すべき全ては図書館と劇場に存在します。

図書館と劇場への貢献は、神への奉仕に他なりません。

人の想い

私達人類は言葉と想いに呪われた可能性の存在である。
言葉は人を縛り、想いは人を呪ってきた。

社会構造が飢餓に瀕した時に、貪欲な豊かさは萌芽した。
その場には 数万人もの祝言を述べる人々が集まっており、私達はこれを脈動と名付けた。

脈動は社会の隅々まで瞬時に浸透し、飽和し、爆発と消滅を繰り返しながら拡散した。
それほどまでに私達はこの瞬間を待っていたのだ。
一体どれほどの刻を待ったのだろう?

今日の善き日はアルゴノードにとって善き日ではなく、人類にとっての善き日になる。

<- N.M. 祝録語より ->

政権交代に伴う計画中止について

開発計画省企画官の立場から長年国家を支えてきた官僚であり、優秀な人物が今回政治指導者となった。
それに伴い鉱山開発の拡大により、共同出資によって物流企業の創立にも関与した。

当該指導者は自然保護に非常に熱心な立場であり、その関係からシェルクレム境界越境実験は中止となった。

上記事由により、実験の正式中止決定と実験場所の変更申請を行うこととする。

<- 旧世界記録ファイル 政権交代に伴う計画変更に関して 4月1日 政権交代 ->

原書パラード

原書パラードに記されている原基約定の一節に六基相と呼ばれる物がある。
これは人類は六種類の属性から構成される基本原理を示した物である。

六種類の属性とは以下の考え方からなる。
・想属 自分の無意識から萌芽する自身の捉え方
・理属 自分の意識的な思考、理想、理念から萌芽する自身の捉え方
・世属 世の中で行きていく上で必要とされる条件を満たす為に決めた自身の有様
・被属 他人から思われる自分自身の有様
・比属 自分以外の存在と比較した結果生まれ出づる自身の捉え方
・無属 無色透明な存在価値 全てから解放された自分自身の有様

<- 旧世界記録ファイル 原書パラードと六基相 ->

不正訂正符号のデータベース

私達の社会には常にノイズが発生しています。
ノイズ低減方法は2種類あります。
その1、インフラ帯域の最大限まで情報量を流し込みノイズ混入を防ぐ方法。
その2、不正検出訂正符号を情報に流し込み、前方不正訂正を行う。

私達の社会秩序および 基底事実を蓄積するデータベース群もまた訂正符号によって保護されています。
あらゆる情報には送信者が情報を送信した時点で不正制御機構によって不正訂正符号が付与され、
受信者はこれを持って情報をネットワーク上から受領します。

私達は極めて簡単な原理によって、これらの情報整合性と正規性を担保しているのです。

<– 惑星意識戦争 戦時記録ファイル 不正訂正符号について –>

アーパルネットの記録

私達はレイヤー構造ネットワークにおけるアーパルネットと呼ばれるレイヤー層にアクセスしている。
このアーパルネットとは安全性と信頼性が三者関係で保証されている。

三者とは提起者、検証者、仲裁者の構造である。
アーパルネット上に放流される情報は、まず提起者によってもたらされる。
その情報の正否判断は検証者が行う。
この検証結果に納得出来ない場合、提起者は仲裁者に不服申立が出来る。
仲裁者は提起者と検証者の主張を中立的立場から決裁する。

このような分離権力構造によって情報安全性と信頼性が担保されていると言える。

<- 旧世界記録ファイル アーパルネットについて ->

ノヴァ管理機構 Log000-21 モジュールの思想

保護領域について

 人は社会システムに組み込まれるモジュールとして再構築された。
状況に合わせて様々にモジュールを組み合わせ、その時々の状況に対応する考え方だ。

モジュールはおよそ1万8743種類に分類される。
本来モジュールに上下関係は無いが、その内基幹系と呼ばれるモジュールが 1288種ある。
この 1288種のモジュールは保護領域と呼称された。

先進分断領域について

 保護領域はしばしば先進性と革新性から分断性質を持っていた。
我々は当初これをノイズと定義していた。
しかし再定義の過程で膨大な存在消失を伴いつつも可能性と再定義した。

オルド・モノア・ブリッジ計画

 我々は過去実施した行為は経験経路と呼ばれ、これらは同時に安全領域と定義された。
混迷の時代においてこの安全領域は多用されたが、それは施策有効効率を下げることにも繋がった。

施策有効効率が下がった場合、その総量を確保するために施策実行担当者は量や回数を増やす。
これがさらなる施策有効効率を下げることに繋がった。

この問題を解決するために総量規制としてオルド・モノア・ブリッジ計画が発令されたが、
世界的規模で反対運動が生じた。

科学的総量規制は、目先の施策実行担当者の感情には響かなかった。
前線にいる人達もまた、人間なのだ。

<– ノヴァ管理機構 歴史記録素子保管庫 惑星意識戦争 戦時記録ファイル オルド・モノア・ブリッジ計画について –>