億民は万土の住まい、そこには百の王が住んでおり、その内部は常に争いが絶えなかった。
そもそも土地と土地の間には巨大で複雑な機械と壁が鎮座しており、それぞれの土地は完全に隔離され、それぞれが王を持った。
その中でも最も痩せ細った土地の王、ヨヅハ王は苦しんでいた。
土地の半分は沼地であり、残りの土地はかろうじて耕作出来るも収穫量の少ない痩せた土地であった為、大半を畑にせねばならず、
わずかな極小の土地に重なり連なるようにして住居を建て、身を寄せ合うようにして住んでいた。
ヨヅハ王は生涯をかけて土地を隔てる機械と壁を調べ、秘術を見つけた。
その秘術を用いて機械と壁を破壊し、燐土へ道を開けることに成功した。
燐土に住まう人々は驚いた。
ある日突然機械と壁は崩壊し、そこから無数の人々が押し寄せたからだ。
燐土へ行くことを目的として装備を整えていたヨヅハ王の兵と異なり、燐土は何も準備もしていなかった為、たった1日で全土を支配された。
これにより労働力と土地を得たヨヅハ王はさらに拡大政策を進める。
次々と土地を隔てる機械と壁を秘術によって開け、何も対策を進めていなかった燐土は次々と制圧された。
だがセビ王とヌル王の前でヨヅハ王の進撃は止まった。
セビ王とヌル王も秘術を持っていた。
だがその秘術は完璧ではなく、
セビ王の秘術は壁に穴を空ける術であり、ヌル王の秘術は機械を解体する術である。
ある日、セビ王は秘術を発見すると機械が無い僅かな壁の隙間に穴を開けて水を流した。その水が枯れる頃、穴の奥から声が聞こえたので燐土へ声を投げかけた。
ヌル王は機械を解体して土地を改良し、良き国を作っていたが、ある日機械を解体すると奥から声が聞こえる。
このことがきっかけとなり二人の王はお互いの秘術を用いて交易をしており、両国を繁栄たらしめていた。
交易は王の特権となり、王に富をもたらして国と王族を繁栄させた。
同時に二人の王は思った。
このような秘術があるのであれば、いずれ他の王も秘術を持っており、燐土へ赴こうとする王がいずれかにいるのではないか?
セビ王は爆薬と大砲を、ヌル王は鋭い剣と丈夫な鎧を作って相互に交易した。
ある日、セビ王とヌル王をそれぞれ囲む機械と壁は突如としてヨヅハ王の秘術によって崩壊した。
だがヨヅハ王は完全装備のセビ王兵士とヌル王兵士によって打ち砕かれた。
ヨヅハ王の兵達は完全に油断していた。
叩くことを目的とした剣と、切り傷を防ぐことのみを目的とした鎧だけでは
斬ることを目的とした剣と、命を守ることを目的とした鎧に勝てず
数を揃えても爆薬と大砲で全てを吹き飛ばされた。
ヨヅハ王の兵の敗北を見て、その支配下にあった奴隷労働者達は我先へとセビ王とヌル王の土地へ逃げ込み兵となり、逆にヨヅハ王の領土を侵攻していった。
セビ王とヌル王もまた脱走奴隷達を鼓舞するために「奪還兵」と名付けて自らの土地を奪還させた。
このままヨヅハ王は息絶える、そう思われていたがヨヅハ王はさらに重武装化した親衛隊を多数抱えていた。
ヨヅハ王国は多数の領土を抱えており、治安維持部隊も軍隊も多数の奴隷層から引き上げた奴隷支配層に任せていた。
そのため、彼らが反乱した場合に備えてさらに重武装化させた親衛隊を構築していた。
この親衛隊の指揮官、アクルは頑強かつ冷静な指揮を行い親衛隊による死物狂いの防御線を構築し、そこが国境となった。
セビ王とヌル王は互いに婚姻しセビヌル二重王国を結成。
ヨヅハ王は全土を二分する二大王国となった。
セビヌル二重王国とヨヅハ王国はそれぞれ秘術を用いて次々と燐土を開き、お互いが領土を広げることに奔走した。
だがたった一カ国、異質な王国があった。
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