暗転体験

ようこそようこそ。
こちらは衰弱死体験コーナーです。
なぜこのような体験コーナーが存在するのか。
それは我々は死者が無意味な存在ではなく、価値あるものと再認識するためです。

人間の平均寿命は96歳を超えました。
しかしながら肉体や脳の平均寿命は60歳前後と言われています。
つまり60以上の年齢は医療によって補完、強化されていると言えるでしょう。

脳細胞の部分的な死滅により、まず簡易な記憶障害が発生します。
それは単純な記憶違いのみならず、人名や顔、相貌の記憶呼び出し不具合と言った物です。
貴方は近親者や友人、子供の名前すらぱっと思い出せなくなります。
それは一度や二度ではありません。
このことが繰り返されることによって貴方は対人関係に対して酷く臆病になり、自信喪失を繰り返していきます。
そのような精神状態と共に行動の活発性が失われ、身体面での機能低下も激しくなります。
ついに貴方は免疫力の低下を引き起こし、免疫力に隠れていた病気が発病し、身体は大きな制限を受けることになります。
このことにより貴方の感情は不安定になり、悲嘆、激怒など感情面で乱高下する事態にみまわれます。
それにより貴方の自発的活動をする意欲は益々失われ、とうとう寝たきりと言われる状態にまでなります。
簡単な身体動作すらも補助無しでは行えなくなり、治療方針が変更され、より簡易な体制へ変更されます。
これにより貴方は自身の死期が近いことを悟るようになります。

想像してください。
貴方はまず視力を失うでしょう。
目を開けているはずなのに世界は真っ暗です。
唯一の便りは聴力です。
しかし貴方はその聴力も失い、光も音も失います。
ついに貴方を声を発すること、指を動かすこともできなくなり、外部からの干渉を受けることも、外部に干渉することも出来ない存在となります。
現に貴方はもう目が見えなくなっているはずです。
つまり衰弱死を実体験した貴方は、真に衰弱死するわけです。
聴力を失うまで残りわずか、貴方の生命が真に価値ある物であることに感謝しつつ。

<– 旧世界 人口調整及び食料管理問題と連動する人道的処刑法より –>